春から初夏へ。艶やかに華を添える「藤色」のおはなし
もうすぐGWです。天気予報によりますと晴れ続きというワケにはいかないようですが、みなさまご予定はお決まりですか? 旅に出るもよし、おうちでゆっくりもよし。それぞれに楽しい時間をお過ごしください!
さて、本日の色のおはなしは「藤色(ふじいろ)」です。この時期に寺社等に訪れる人を魅了する艶やかな藤棚や、瑞々しい緑の山肌に力強く野生するフジの花に由来し、春から初夏への移り変わりを感じさせる色。華やかで、どこか涼やかさも感じさせてくれる魅力的な「藤色(ふじいろ)」を見ていきたいと思います。
「藤色(ふじいろ)」
フジの花のような明るい青紫色を「藤色(ふじいろ)」といいます。平安時代から近代に至るまで、時を超えて日本女性が長く愛好し続けてきた色のひとつです。平安時代に隆盛を極めた藤原氏の「藤」に通じることからも、高貴な色とされてきました。明治以降になっても、合成染料のモーヴによって染め出された「大正藤」や「小町藤」というように新たな色名が現れたそうです。
フジはマメ科のツル性落葉大木で、4月中旬から5月初旬にかけて開花します。日本には「ノダフジ」というツルが右巻のものと、「ヤマフジ」という左巻きのものが山野に自生しています。一見艶やかなフジの花ですが、その茎は他の樹木に絡みながらどんどん伸びていく強靭さをもっています。その見た目の美しさと芯の強さをあわせもつ花の特性は、「藤色」のイメージにも大いに通じるのではないでしょうか。
「藤色」は人気が高く、バリエーションが豊か
平安の世から長きに渡り日本女性に愛されてきた色ということで、藤と名の付く色名は多く存在します。主役の「藤色」とあわせて、本日は計6色をご紹介しましょう。
●藤色(ふじいろ)
藤の花の色からきた色名。紫の薄色として古くから使われており、紫のもつ高貴さをよりソフトにした色。
●藤紫(ふじむらさき)
「藤色」を少し濃く青みがからせた色。明治から大正にかけて「藤紫」という呼び方で流行りました。
●紅藤(べにふじ)
赤みの淡い紫色で、「藤色」を赤みがからせた色。和装では「藤色」は年配向き、「紅藤」は若者向きの色。
●藤納戸(ふじなんど)
「藤色」と江戸時代に流行した「納戸色」に由来。「藤色」よりも青みをと灰みを帯びた淡い青紫色。
●藤鼠(ふじねずみ)
薄い紫の「藤色」を鼠がかからせた、落ち着いた青紫色。江戸中期より和服の地色として好まれました。
●藤煤竹(ふじすすたけ)
「藤色」がかった「煤竹色」のことで、赤みの暗い灰紫色をいいます。江戸後期から行われた染色。
こうして藤の名がついた色を並べて比較してみると、以前ご紹介した「柳色」と同じく非常に多彩。この微妙な色のニュアンスの差をみるにつけ、「藤色」が時代を超えて多くの日本女性に愛されてきた色であることがわかります。
品と華を醸す「藤色」とそれに関連する色の数々。これから初夏に向けて、スタイリングに取り入れてみませんか。ブルーベースの方に大変おすすめの色で、特にサマーの方の得意色でもあります。今までこの色を手にすることのなかったサマーさん。是非トライしてみてください。
シンシアカラーズでは、色の世界を辿りながら、そこにつながる興味深いおはなしもあわせて紹介しています。今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
▶春の歳時記の関連記事: